「ん……ふぅ」
 きつい内壁を指で嬲られている、それだけというにはあまりに強い刺激ではあったけれどいまだ中心には強い刺激を与えられていない。
 それなのに潤の唇からは鼻にかかったようなあえぎがもれている。
「あ……っ」
 指が中で、曲がる。
 声ににやり、笑った吉広の顔を見、そして鏡に写った自分のソコを見る。
 命じられなくても潤の目はもうソコに吸い寄せられる。
 大きく広げられた、足。娼婦みたいに。男を誘ってもだえている、ソコ。
 ぴちゃり。音を鳴らして唇を舐めた。
「足らないんだろう? 潤」
 反射的に首を振る。
「なんにも知らなかったお前が……こんなにして咥えこんでる」
「や……っ」
「なにが嫌なのかな」
 こうされる事? 嗤いながら吉広が埋めた指を引き抜いていく。
 蠢いているよりきつい、快感。壁が擦られるそれに。
「ぬ……っ」
 抜かないで。
 言いかけた、言葉に一瞬正気を取り戻した潤の顔が青ざめ。
「そう、そうやって素直になればいい。もう一度ちゃんと言ってごらん」
「い、いやだ」
「いやなら、ね」
 ぬるり、薬指が抜け、中指の先端だけが中に、残る。
 いっそ全部、咥えこまされるよりすべて抜き取られるよりずっと強い快楽が下腹に集まった。
 わずかにのめりこんだ指先が入り口を撫でるように愛撫している。
「……ぬか、ないで」
 言葉を口にしたときだけ潤の血の気の薄い耳たぶが血の色を見せた。
「もうここまで抜いちゃったんだ。お願いする言葉が違うだろう?」
 あいた片手で吉広は潤の内腿を撫でている。
 それも中心に触れるかどうか、というところで止めるじらすようなやり方で。
「挿れて……」
 猥語を口にしている。
 それを自覚したとたん、どうしようもない感覚が体中を支配した。
 全身が赤く、染まる。
 言わされている卑猥な、言葉。嬲られる、悦楽。
 堕ちそうだった。
「いい子だね、潤」
 眦に唇が寄せられたなにかを吸い取る。
 涙? なにに泣いたのか、わからなかった。
「潤」
 少しばかり埋まっていた指も抜き取って立ち上がった吉広の唇が自分のそれに重なってくるのを、なにか得体の知れない思いで潤は見ている。
「せっかくいい子になったんだから、ご褒美をあげようね」
 吉広は言い、潤の視界からも鏡の中からも消えた。
 戻ってきたとき手にしていたのはグロテスクな、玩具。
「なっ」
「指じゃ満足できないかわいい潤におもちゃをあげる」
 まるでそれが本当に子供に与えるおもちゃででもあるように、吉広が笑う。
「まずは上のオクチにあげようね」
「……んっ」
 ぬくもりを持たないシリコンの、それでも形だけはいやに精巧なそれを唇の間に挿れられる。
 ぴちゃぴちゃと。言われたわけでもないのに舌を鳴らし、絡め、それを濡らしていく。
「上手だよ、潤」
 耳元で、声。自分の体温が移りはじめた玩具がまるで、「吉広」ででもあるような、錯覚。
 深く、浅く唇の間を行き来する玩具にぞくぞくする。
「くちでするの、気持ちいいだろう? 淫乱な潤は飲み込みが早いね」
 嬲り言葉にまた体が、熱くなる。
 唇から玩具を吐き出し
「淫乱じゃ、ない」
 言いながらわざと、それの先端に唇を擦りつけた。
「お前みたいなのを言わなかったら誰に言うんだか」
 今度は吉広の手で玩具が擦りつけられる。吐き出されたそれは潤の体液にいやらしく光っていた。
「男の指を咥えこんであえいでたかと思うと、足らなくなってこんなものを欲しがってる。淫乱じゃないってそれでも言うのかい?」
「……っ」
「ほら、鏡を見てごらん。さっきより……切なげだ」
 言われるまでもなかった。
 見なくてもわかっていた。
 玩具を唇に押し込まれた時からソコはグロテスクなものを欲しがっている。
 それでめちゃめちゃにされて最後にいきたいと体が欲している。
「言われなくてもたっぷり濡らしたんだ。挿れてあげようね」
「や……」
 形ばかりの、抵抗。
 ソコが言葉に反してひくついている。
「ほら……見るんだよ、潤」
 指が入っていた場所が玩具に、押し入られている。
 ワセリンのぬめりと自身が濡らした玩具のぬめりでさしたる抵抗も見せずにそれが這入って、くる。
 押し広げられたソコが鏡に、写った。
「だ、だめ。そんな……」
 這入るとは思えないものが入るべき場所ではない所に侵入する、し尽くす。
「悦んでるくせに」
「あ……ぁっ」
「奥まで、欲しい?」
 欲情にかすんだ頭に、声が響く。
 禁忌もなにもなかった。
「欲しい……っ」
 吉広が、笑った。
「……っあぁっ」
 突きこむように、奥まで玩具が。
 快感に身悶えするたび、縛り付けられたままの椅子がぎしぎしと音を立てる。
 ソコが。中心が。下腹が。なにがどこだかわからないほどの悦楽。
 体中が欲情に染まり尽くしている。
「バイブ突っ込まれてのたうちまわってあえいでる。それでも淫乱じゃないって?」
 嗤い声。
 気にならなかった。
「いやらしいこと言われるとココがひくひくしてるよ、潤」
 鏡に写ったソコ。
 吉広の手で玩具を抜き差しされて悦んでいる、ソコ。
「こっちはこっちで泣きっぱなしだしな」
 あいた片手が中心に、触れる。
 直截な刺激に体が跳ね上がった。
 その腹が中心の吐き出した滴でぬめっている。
「イかせてって言ってごらん」
「イか、せて」
「どうやって?」
 嗤い。
 体を玩ばれ、言葉で嬲られる快感にもう思考が機能しない。
 イきたい。
 もうその事しか考えられない。
「おもちゃで……おもちゃで……」
 舌が、もつれる。
「おもちゃでどうして欲しい?」
「……あぅっ」
 言葉で嬲られている、それだけで中心はもう限界だった。
「しょうがないな……」
 吉広が耳ともに唇を寄せ。
「イかせてやるよ」
「んぁ……ぁっ!」
 なにをどうされたのかわからなかった。
 縛り付けられた椅子が壊れそうな音を立てていたことだけが妙に耳の中に残り。
 そのまま失神していた。




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