音も立てずに茂みが動いた。 うっすらと線のようだった隙間がちょうど目、ひとつ分だけ広がり。 妖狐が眠っていた。 片手枕でゆったりと体を伸ばしている。深い色をした苔の上、銀の尻尾が時々動く。 かさり。 こちらとは反対の茂みが割れ人影が現れた。 ほっそりとした肢体。幾分まだ少年の線の抜けきらない体はしなやかで音も立てずに歩くあたり、まるで猫科の生き物のようだった。 いや。 その彼の短く整えた黒髪の間から見えるのは、虎の耳ではないのか。 妖狐のそばにそっとかがんだ体の影に見え隠れするのは虎の尾ではないのか。 彼は眠る妖狐に悪戯をしようとでもいうのか、子供の小さな牙で妖狐の耳を、噛んだ。 「……虎精か」 ゆっくりと目を開ければ妖狐の金の目が現れる。 木漏れ日を反射して、美しい。 手枕をはずしつつ半身を起こし、あいた片手は虎精の髪の中。 心地よさげに虎精はその手に頭を押しつけ。 その表情がかすかにゆがむ。 「虎精?」 訝しげな妖狐の声など聞こえていないのか、虎精は妖狐の腕といわず髪といわず顔を近づける。 「人間の匂いがする」 そう、不快そうに虎精は言ったのだった。 「子供のくせに生意気だねぇ」 妖狐が笑う。 「いつか喰ってやる」 虎精も笑い、捕らえた妖狐の手首に牙を立て。 そのままちろり、舐める間も視線ははずさない。 「妖狐……」 呼んで虎精は目を閉じる。 「喰うんじゃなかったのか」 虎精の耳にそうささやけば癇性な虎の尾が妖狐の足を打つ。 「……ふん」 ひとつ笑って腰を抱き寄せ、くちづけた。 ぴちゃり、音がする。 「……ん」 じれたのか虎精は妖狐の首に腕を絡ませ、自分から彼の唇の中、舌を差し入れ。 赤い舌が妖狐の唇を舐めれば吐息がもれる。 そのままそっと噛めば 「痛いだろう」 そう妖狐に耳を噛まれて仕返しされて。 「あっ」 いつの間にやら妖狐の指は器用に虎精の着ていたものを剥ぎ取っている。 その艶やかな肌に舌を這わせ。 「……んっ」 胸のあたりを唇に含まれて虎精は思わず声をあげ。 「ここがイイ?」 見上げて笑った金の目を睨もうとしてやめ、代わりに 「イイ」 言っては自分で妖狐の足にまたがった。 「もっとして、妖狐」 軽く首を傾げて言いながら、虎精は自分の唇を舐めあげる。 淫靡な水音がした。 「どうして欲しい?」 胸の先端を舌で弄えば虎精の体が強張って、絡めた腕で妖狐の頭を自分の体に押し付ける。 「んっあぁ……」 「ほぅら、どうして欲しい?」 言ってごらん、虎精。 妖狐が煽る言葉に捕らわれた虎精が望みを口にするまでそう時間はかからなかった。 「触っ……てっ」 「どこを触って欲しいだかねぇ、虎精は」 「あ……ん」 「ここか?」 そうしてかすかに触れたのは虎精の背中。 片手で虎精の肩を抱き込んで動きを奪い、もう一方の手が、指が背中を触れるか触れないかの感触で撫で上げる。 「んっく……ぅ」 もどかしげに荒く息をつきながらも虎精の手指は動く周り、妖狐の薄い衣を肩から落とさせ。 「あ……や……っ」 細い尻尾を妖狐が腕に絡ませてはほどき、あるいは指でしごきあげ。 「だめ……」 くたり、ちからの抜けた虎精が額を妖狐の肩に埋めた。 「なにがだめなんだかねぇ」 妖狐が笑う。 笑って虎精を足をまたいだまま膝立ちさせれば妖狐の目に彼の中心があらわになった。 「や……だっ、見るな……っ」 「今度は『いや』かい? こんなにしてるくせに」 腰を押さえて逃げ場をなくし、先端に軽く唇を寄せれば虎精自身の吐いた透明な粘液が妖狐の唇と彼の中心とをつなぐ。 「……んんっ」 「ほら、どうして欲しいのか言ってごらん」 言わなきゃしてあげないから。 そのくせちろり、舌先で先端のくぼみにまたたまり始めた滴を舐め取る。 「あ、ぁっ」 「言えないの? 虎精……」 中心の段差を舌で弄ばれて虎精は堪えがたげに首をふった。 長い尻尾もまた快楽を耐えているのかうねっては地面を打つ。 「あ……もっとちゃんと、して」 「ちゃんと、どうして欲しい?」 「……くちで、してっ」 にやり、笑った妖狐をひとつ虎精は睨み返し、けれどその顔はすぐに蕩けた。 「ふぅ……っ、あ、あっ」 腰のあたりでするいやらしい水音に、よけい神経が煽られていく。 「妖狐……ぉ」 快感を追いたくて動きたがる腰は、がっしりと妖狐の手につかまれ動きを阻まれ。 「も……だめっ」 切なげに眉根を寄せては首をふり。 「まだだ」 その耳に妖狐がささやく。 と、ぴしり、じれったげに虎精の尻尾が妖狐の足をはらう。 「こら」 言って妖狐は虎精の胸を甘噛みする。 「ん……っ」 立てられた牙の甘美な痛みにのけぞった。 「ひぁっ」 背中に快感が走り、悲鳴めいた喘ぎがもれる。 妖狐の柔らかい銀の尾が背中に触れていた。 「妖……っ」 自分の腰を抱いている片手を無理やり引きはがし、妖狐の指を唇に含む。 「んっ」 ぴちゃぴちゃと、わざとその指に水気を乗せていく。 両手で抱えるように舐める仕種はまるで指ではないものを愛撫しているようだった。 「イヤラシイこだねぇ」 のどの奥で笑った妖狐は舐められている指を虎精の口の中で折り曲げては舌を弄んだ。 「ん……はぁっ」 指がゆっくりと引き抜かれ、そしてまた突き立てられ。 「気持ちイイ? 虎精」 目を閉じて夢中になっていた個性が呆けたように目をあけ。 すでに充分に濡れそぼった指を虎精はまだ舐めている。 「……して」 切なげに顔をゆがめた虎精にほだされたのか、今度は意地悪く問うこともせず濡れた指が虎精の後ろにまわった。 「んん……ぅっ」 敏感になっている部分の入り口に指が触れ、ぬるり、動く。 「あ……挿れて……」 「なにを?」 すかさず問うた。 「指、妖狐の指……ソコに挿れて……っ」 うわごとのように呟く虎精の膝が堪えがたげにふるえていた。 「あぁ……っ!」 もぐりこんだ指が送ってくる悦楽に、がくがくと体中がふるえ。 いっそつらいほどの快感に抱きしめた妖狐の素肌に中心がこすられ、もうなにがどうなっているのか理解できなかった。 「ひっ、あ……あっん……っ」 「熱いな……虎精」 「ひぃっ……や……んっ」 ささやかれた言葉の意味に、よけい体中を熱くしてソコが妖狐の指を締め付ける。 「喰いちぎる気か?」 笑った妖狐の耳に虎精は牙を立て。 「喰いちぎってやるから……はやくっ」 恐いことを言うこだねぇ。 そう笑った妖狐がひくつくそこから指を抜き。 ゆっくりと自身の中心の上に虎精の腰を落とさせていった。 「……ふ……んっ、妖狐……っ」 じれた細い尻尾がひくひくと空中でのたくっている。 妖狐の手は虎精の腰を押さえつけている。 先端がわずかにもぐりこんだ、その位置で。 「だめ……全部、全部……」 吐息とともにうわごとをもらしつつ虎精は首をふる。 「なにが『全部』だって?」 意地の悪い問いにぴちゃり、虎精は唇を舐めあげ彼の耳にささやいた。 「妖狐の……全部、挿れて」 ほら、もう。 と、もぐりこんだ先端をひくつくソコで締め付けて。 「……虎精」 目を細めた妖狐が軽く唇を合わせてきたと思う間もなく 「あぁ……っ、く……ぅっ」 ひと息で最奥まで突き立てられた。 「熱い……虎精」 細い体を抱きしめれば、快楽に堪えているのか虎精の尻尾が宙に踊る。 「あ……くぅ、妖狐……妖狐ぉ」 動きにくい腰を動かし、熱い『中』で妖狐を締め付け。 夢中になってただ悦楽だけを追った。 がさり。 のぞいていた茂みにうっかり触れて、潅木が音を立てる。 こちら側に背を向けている虎精は気づかなかったけれど一瞬、妖狐がにやり、笑った気がした。 「虎精……」 快感に呆けたように唇を半ば開けている虎精を呼べば、ちろりと赤い舌がすぐにのぞいた。 舌を絡ませ軽く音を立てて吸えばまた虎精の中が熱くなる。 「ん……っあ、ぁっ」 「ほら」 そう軽々と虎精を持ち上げればソコがいやだとばかりに喰いつく。 「本気で喰いちぎられそうだねぇ」 「や……妖狐……やだ……」 「いい子にしてろ」 言ってはそのままさらに持ち上げ、そうしておいて体勢を入れ替えさせた。 今までとは逆に妖狐の足をまたぎ、妖狐に背中を預けるように。 「ん……あっ!」 妖狐の足で大きく足を割られ、あられもない格好を嫌がろうと体をひねったとたん、ソコに熱いものが突き刺さる。 「あぁ……っ」 妖狐の片手が胸の先端をいじる。 「勃ってる……ここも」 笑い声。 もう片手が虎精の中心に触れれば、触れた指が粘った液体でぬめった。 「すごいねぇ、虎精」 耳元で聞こえる声のひとつひとつにびくびくと虎精は反応を返し。 「あ……んっ」 妖狐の足に手をついて不自由そうに虎精は体を上下させ。 その体を抱き寄せ、虎精の足を抱え上げては広げた。 「あ……や、や……恥ずかしい、妖狐……っ」 「こっちは嫌だとは言ってないな」 ぞくりとする笑い声。 半端に突き立てられたソコから伝わる快感がもどかしい。 「妖……」 「ほら、あの隙間からお前の大嫌いな人間がのぞいてる……」 「え……」 「お前のこんな格好を見てるよ……」 笑いながら虎精の体をゆすりあげ、落とす。 「ん……あぁっ、やだ、やだっ妖狐、やだ……ぁッ」 屈辱に身悶えする虎精のソコは、けれど一層熱さを増して。 「こんなに広げてるから、全部見られちゃうねぇ」 言葉に、必死になって閉じようとする足を妖狐はがっしり押さえてそれを阻んだ。 「お前のココが、ひくひくしてるのも、全部」 あいつに見えてるよ。 「ひぃあっ、や、だめっ妖狐……ぉっ」 羞恥に肌を染め、けれど虎精のソコは悦楽を貪るように蠢き続けて。 「どこがだめなんだかねぇ」 笑った妖狐の動きが激しさを増した。 「やっ……見られる……見られちゃう……ぅっ」 のたくる虎精の尻尾が妖狐の首に絡まり、ソコに合わせるかのように脈動する。 「見るな……見るなぁっ! ……あっ、くぅ……っ!」 追い立てられた虎精の体がのけぞり硬直し。 どくん、中心がひときわ大きく脈打ちそこから白い粘液が、あふれた。 「ふ……ぁっ」 かたさを失った体が妖狐の腕の中に崩れ落ち、そのまま虎精は気を失い。 その足の間からとろり、液体が流れていた。 妖狐は失神した虎精を自分の衣で包んではそっと、抱き上げ。 そのまま立ち去りかけたのになにを思ったのか彼は振り返る。 「またのぞいたりしたら……」 「今度は喰うよ……」 にやり、笑って茂みの向こう。 妖狐は消えた。 End 入り口へ
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