「ん……っふぅ……」
 サンタが、喘ぐ。
 素肌にサンタの上着だけをふわりとはおり、少年は、「彼」をあおる。
 少年は肘掛け椅子にゆったりと腰かけ、片足を乗せ……その奥には己の目でさえ見たことのない場所があられもなくさらされ。
 周り中に散らかったクリスマスの残骸。
 食べ散らかされたご馳走にケーキ、あちこちに転がった、ワインのビン。
 なんとも似つかわしくなく、そして扇情的だ。
「は……ぁ」
 ぴしゃり。
 自分の指を舐める。
 その視線の先に、彼が。
「く……っ」
 耐え切れず小さなうめきを上げた彼の体はなにをされているわけでもないのにその場所を動けない。
 ぺたりと裸で床に座ったまま少年サンタの劣情にゆがんだ顔を見ている。
 ただ。
 腕だけがゆるく、縛られていた。
 それと手も彼の大人の力を持ってすれば他愛なくほどけてしまうだろう。
 なのに、彼はほどきはしなかった。
「ケーキ、まだ食べてないんだ、僕」
 サンタは言う。
 にこりと笑うその笑顔のなんと妖しいことだろう。
 ぞくり、彼は身をすくませ。けれど目を閉じる事もできずにサンタに視線は吸い寄せられて。
「ふふ」
 サンタは笑う。
 可愛らしい指でそのままケーキを一切れ。
 口に運べば唇の周りに真っ白いクリームがついた。
「あ……」
 また。
 サンタは彼の欲情をあおるような笑みを漏らす。
 そしてゆっくり……わざと見せつけるようにクリームを舌で舐め取った。
「……甘い」
 アレと違って、そんなつぶやきが彼に聞こえた気がする。
 あおられ、じらされ続けた彼の体はすでにもう「その事」しか考えていない。
 柔らかく熱い、少年の中に入りたい。
 猛り狂った中心に狂わされそうだった。
「あ……落としちゃった」
 ケーキをきわどい所に落としておいて、少年はわざとらしく言い、微笑む。
 まるで散らされたクリームは男の情欲の化身のようで彼はそれが自分のものでない、ただそれだけのことに歯軋りをする。
「ん……っ」
 胸の突起についた白いクリームを己の手でぬぐう時、サンタは小さく声をあげる。
 そしてぴちゃ。水気の音を立てて指先を舐めた。
 繰り返し、繰り返し。
「あ……ん。ここにも」
 サンタは言う。
 そして彼の目を見た。
「ねぇほら。ついてるよね?」
 椅子に上げていた片足を肘掛にかけ、もう片足も。
 娼婦のように押し広げられた足のあいだ、内腿にかすかな、クリーム。
 それが体温に溶け、つ……流れた。
「あ……」
 そんな小さな刺激にも少年は喘いだ。
 まるで、耐えられない、とでも言うように。
「ねぇ……きれいにしてよ」
 その一言が。
 今までどんな蟲惑にも耐えていた彼の最後の理性を焼ききった。
「あぁ……っ」
 彼は少年の足を抱え、ぴちゃぴちゃと音を立てながらクリームを舐め、それからもっと少年が欲しがっている、場所へ。
「……っ」
 声もなくサンタは身をよじる。
 中心を仕返しのようにじらされて。
 上着だけを身につけたサンタが肘掛け椅子に両足を乗せ、男がその中心を貪っている。
 なんという、情景。
「もっと……先、舐めてっ」
 耐え切れずに少年は言葉と共に彼の頭を引き寄せ。
「あ……っあっあっあ……っ」
 びくびくとサンタの中心がうごめくのを彼はほくそえみ、熱いそこから唇を離した。
 嗤う。
 ようやく支配下に置いた少年を思う存分堪能しようと、彼は嗤った。
「もうちょっと……して」
 とろり、とろけた顔でサンタが言えば、彼はにやり笑って答えない。
「あぁ……っ」
 悪戯に少年の先を唇に含み、ねぶり、すぐに離した。
「や……んっ」
 ねめつける少年の唇。
 男を誘い、あおる唇。
「……ふ、ん……っ」
 それを思う様、蹂躙した。
 甘い。
 欲しくて欲しくてたまらなかった、唇。
 絡み付く柔らかい、舌。
 己の中心がどくどくと脈打っていた。
「パーティーには、酒がつきものだな」
 半ば独白めいた彼の言葉。
 少年は始めてそれに体を縮めようとしたけれど、男の力でしっかり押さえつけられた体に、それは敵わない。
 そんな仕種もが獣欲に目のくらんだ彼には扇情だった。
「ほら、ワインだ」
 彼は優しげに微笑む。
 その手に飲み残しの赤ワインの、ビン。
「飲ませてよ」
 サンタは笑う。
 彼の意図を悟ったのかもしれない。
 彼はビンからそのままひとくち口に含んでは少年に、口移し。
「は……ぁっ」
 酒に引きつれた口の中、彼の舌がゆっくりとたどり、慰め思う様、貪る。
 ……飲みきれなかったワインがひとすじ、赤く唇の端から漏れ。
「飲めよ、ちゃんと」
「こっちが、いい」
 サンタは言う。笑う。婉然と。
 彼の中心を手に持って。
「……っまだだ」
 ちいさくうめいた彼もまた、笑う。
「こっちのオクチが酒欲しいってよ」
 するり、少年の奥を指でたどればサンタは悲鳴を漏らし。
「欲しいだろ?」
 欲しいって言えよ。
 彼は言う。
「下のオクチにも、頂戴」
 とくん、中心を波打たせ、少年は言った。
 ぴちゅ、己の唇を期待に舐め上げながら。
 彼は勝利に笑みを漏らし、ゆっくりと指を濡らしていく。
 たちまち指は赤ワインに染め上げられ、そのまま。
「あっあぁ……っ」
 少年の奥に沈んだ。
 ソコで指がうごめく。
「んっ……っ」
 高まっていく少年の、声。
 喘ぎを楽しみながら彼は指を引き抜き、赤く染め、また埋めていく。
「やっ……もっと!」
 耐え切れないサンタの声に彼は欲情にゆがんだ笑いを漏らす。
「じゃあ……」
 言いつつ彼は。
「あーっ……っ!!」
 ワインのビンをそのまま少年のソコにつきたて。
 ずるり、いつのまにか彼に弄られたがるようにずり落ちた体のよく見える場所、ソコにワインの首が全部、はいっている。
「ほらっ」
 彼はいたぶるかにビンを上から、押す。
 たぷん、たぷん。
 中でワインが、ゆれる。
「あ……っあ……っ」
 切れ切れの、声。
 ひくり、欲しがるように貪欲に動いたソコを彼は見逃さなかった。
「淫乱。下のオクチだけじゃ足らないんだろ」
 椅子の上に圧し掛かり彼は傲慢に腰を突き出す。
「ん……」
 無理やり唇に押し込まれた熱いものを苦しげに飲み込んだのも束の間。
 上目遣いで少年は彼の顔をうかがいつつ、熱心に舌を、使う。
 時折突きこまれる中心にむせては涙をため。
 それでもぴちゃぴちゃ音を立てて舐めるサンタは楽しげでさえ。
 彼が少年の顔をもっと見てやろう、そうして髪をかきあげたとたん。
 少年の舌にいままでより一層、熱が入った。
「はっ離せっ」
 声が聞こえないのか少年はさらにたっぷり舌を絡ませていく。
 それから根元まで口の奥に、導いて。
「……うっ」
 彼はうめき、少年の喉のおく青臭い粘液を、放った。
 にや。笑う少年の唇の端、飲みきれなかった白い液が先ほどのワインと混じってはピンクのしずくを作り、ぽたり、落ちた。
「おいしい……」
 とくん。
 放ったばかりに中心に、またも血液が集まっていく。
「暑いよ、ねえ……ココが熱いよ」
 体を離した彼を少年はまたもあおっていく。
 情欲に白くなった両手の指で緑のワインボトルをつかみ、自らゆすぶる。
「ん……っココ、ねえ、ココっ」
 ケダモノに取りつかれた彼は。
「ひぃ……っ」
 少年が悲鳴をあげるのもかまわずワインのビンを引き抜いた。
 つつ……っ。
 真っ白い内腿に赤いワインが。
 たどり、流れる。
 倒錯的な、美。
「は……んっ」
 彼は少年のソコに舌をもぐりこませ。
「熱いな」
「ほ……しいっ」
 サンタの嘆願など聞こえぬふりで彼は舌先、ソコをなぶり続ける。
「ね……ぇっ!」
 両足を抱え、中心までをも、ねぶり。
 ぴちゃり、ぴちゃり。
 いやらしい水音だけが静かな室内に響き渡る。
「は……ぁっ」
 悦楽に耐えられなくなった少年が逃れようと身をよじる。
 が。
 がっしりと捕らえられた足はほどけない。
「あ……っ」
 またもソコに、刺激。
 意識が焼切れ、真っ白になっていく。
「……入れ……てぇっ!!」
 声と共に。
 熱く脈打つものが少年の中に押し進み。
 どくり、蹂躙されていく。
 彼の高笑いを聞いた気がしたけれど、少年にはもうなにもわからなかった。
 あるのはただ。
 快楽、それだけ。

 それから何度果てたのかさえ。
 わからなく。



 二日酔いに重たい頭を抱え、「彼」は目を覚ます。
「わぁぁぁぁぁっ!!」
 いっそ気でも狂ってしまえ。
 視線の先には。
 ケダモノの情欲に体中をどろどろに汚された少年が。
 サンタの衣装の上着だけを羽織った。
 そして両足のあいだから赤いワインと白い欲情とを滴らせ、こびりつかせた少年が。
 彼の弟が。
 彼の悲鳴で目を覚ました弟はにやり、笑う。
 そして手を差し伸べ。
「もっとしてよ、お兄ちゃん」



モドル