春も遅いというのに、冷たい風の吹く会社の屋上に人がいる。 昼休みであれば不思議でもない。 広く開けた屋上で女子社員がバレーボールに興じては笑いさざめく声がする。 青く高く、澄んだの空。 吹き抜ける風が肌を粟立たせはしても、柔らかな陽射しが陽だまりを作っていた。 その給水塔の影で 「や……やだっ、はなして……っ」 小声で抗う、声。 「こんなとこじゃ……」 「ここじゃなきゃいいわけだ」 「そんな……っ」 午後の始業を告げる鐘が、鳴った。 ほっと安堵のため息をもらしたのも束の間、彼――砂場瑞貴は人気の途絶えた給湯室へと連れ込まれ。 決して小柄ではないのだが芯の弱さ、流され易さが現れた体だった。 労働に慣れていない細い指がかすか、震えている。 「花田さん……仕事」 「営業に出てることになってる」 「……え」 「わかるか? 後輩」 にやり、花田悟は嗤う。 笑ってドアの前、椅子でふさいだ。 「でも、僕はそんなこと……きいてません」 「新人の君の教育係は誰だったっけね?」 有無を言わせない声が瑞貴を捕らえてしまう。 今にも逃げ出そうとする瑞貴の腕を軽々と捕らえては、かりり、耳を噛んだ。 「あ……」 思わずあげた声に悟がにやり、笑い瑞貴は羞恥に上気する。 彼の指が瑞貴のネクタイにかかってはあっという間に緩め、ほどかれた。 「やめ……っ」 「縛られたいのか?」 抜き取ったタイを指に絡ませ笑うその口元に、微笑。 やりかねない、瑞貴は慌てて首を振った。 やられたことも、あった。 思い出してはそっと触れた手首にちくり、あのときの痛みがよみがえる。 すでに消え果ているはずのきつく縛られた赤い痕さえ、目蓋に浮かぶ。 酷くしたな、そう言って手首にくちづけた悟の声の甘さと共に。 「こい」 声に。 瑞貴はこの何ヶ月かで仕込まれきったくちづけを悟に与える。 頭一つ分ほど長身の彼の肩に軽く腕を投げかけ、唇を掠めるように、くちづけ。 軽く噛み、そのあとを舌でたどる。 ぴちゃり。 わざと立てられた、水音。 「あ……」 その頃にはシャツがすでにはだけられていた。 「ん……っ」 新人研修、と称しては仕込まれた。 彼の指が脇腹をたどる、ただそれだけで敏感に反応を返し、悟はそれを嗤う。 「……っ」 綺麗に切りそろえられた爪が胸のあたりをそっと弄る。 触れるか、触れないか。 刺激に体が震えた。 「大学でなに勉強してきたんだか」 悟が嗤う。 嗤いながらくるり、指の腹で柔らかくなぞり、それから摘みあげ。 「はぁ……っ」 「こっちの方が好きらしいな、瑞貴は」 耳元でささやく声が欲情に掠れている。 その声にぞくり、背筋になにかが走り瑞貴は慌てて頭を振った。 「好きなんだろ、こうされるの」 「ひぁっ」 「ほら」 頭を振ったのを否と受けた悟が何度も瑞貴のそこを摘んでは嬲る。 がくがくと膝をふるわせ始めた瑞貴を冷たい目で見ながら唇を胸に触れさせ。 「や……っ」 「ふうん」 あっさりと引いた彼の指が濡れた胸にまた戻り。 「あっ」 ぬるり、指の腹で加えられる快感に瑞貴は身を捩じらせては抗った。 「イイんだろ?」 嗤いを含んだ声に必至で首を振れば彼が喉の奥で笑う。 「勃ってる」 わざと耳元でささやかれた嘲笑に慌てて腰を引きいた瑞貴の顔色が変わる。 彼の顔を見たときその間違いに気づいたもののもう、遅かった。 「こっちもってことか」 冷たい、笑顔。 「あ……や……」 するり、撫で上げられた中心への快楽から逃げ出そうとでもするように身を捩れば腕をつかまれ。 「いや? どこが?」 そして貪るように唇を奪われた。 長いくちづけにいつしかつかまれていた腕はほどかれ、それが腰のあたりを彷徨い始める。 片手は髪に差し入れられ、そっと撫でるような愛撫を加え。 とろり、蕩けるようなやさしい快感に瑞貴の体から力が抜け始めた。 「ん……ふぅっ」 解放された唇からもれるのは満足のため息。 「あ……っ」 甘い快楽に身をゆだねていた体に突然加えられた強い刺激。 いつのまにか脱がされかかった下着の隙間から悟の指が侵入している。 「ん……ッ」 中心を悟の指が捉えた。 ぴちゃり、彼は舌を鳴らしては口元に笑みが浮かべ、差し出した舌でそのまま瑞貴の胸を含んだ。 「あぁ……っ」 硬くなったソコを丹念に舌で弄り、唇でやわやわと噛む。 そのたびに瑞貴の体が弓なりに跳ね上がるのを楽しむように彼は目だけで笑った。 「そこ……も、や……っ」 悦楽の激しさに涙さえ浮かべ瑞貴は言う。 中心の熱さはすでに耐えがたくなっていた。 「どうして欲しい?」 意地悪く、問う。 愛撫を休める事のない手に瑞貴が身悶えするのを楽しんでさえいた。 「な……舐めてっ」 どこを。間髪いれずに悟は問い返す。 快楽に潤んだ目で、欲情に掠れた声で瑞貴は。 「ここ、して」 と。 己の手で中心に触れ、誘うようにシンクに軽く腰を預けながら。 水音をさせて期待に乾いた唇を、舐めあげた。 「ん……邪魔……」 呟くように瑞貴は言うと足を束縛していた衣服から片足を抜いた。 扇情的な眺め。 白いシャツははだけたまま乱れ、シンクに浅く腰をかけた姿のまま片足に衣服の名残がまとわりつく。 その奥に。 自分の目にすらさらす事のない場所が、熱く。 そっと片手でソコを覆うのさえ、劣情を煽り立てているようにしか見えなかった。 「はぁ……」 耐えがたい熱情を訴える中心を、瑞貴は自分の手できつく、握る。 「こら」 悟の口元を掠めて消えたのは苦笑だったろうか。 瑞貴の足元に膝をつき、悟は軽く中心に添えられた手に歯を立てる。 「あっ」 瑞貴は些細な刺激にも耐えがたい風情で喉をのけぞらせ。 「こんなにしてる」 悟が嗤う。嗤いながら瑞貴の指を唇で捕らえた。 「んっ……あ」 それじゃないと切なげに首を振る瑞貴にかまいもせず悟は一本ずつ、丹念に指を舐めあげていく。 ぴちゃぴちゃと、まるで違うものを咥えているかのように。 「あ、やっ。こっち……して……ッ」 その言葉が終わるより前に。 悟が中心を、咥えた。 「あっあっあっ……っ」 いっそ苦しげなまでに首を振り我と我が手で瑞貴は自分の体をかき抱く。 耐え切れないほどの悦楽に。 舌が瑞貴のイイ所をたどっていく。ここも、そこも、すべて悟に教えられたところだった。 後ろさえも唇で愛撫されてはたっぷりと潤わされ。 「はぁ……んっ」 熱情に意識が白く、焼ききれそうだった。 「あんまり声出すな。聞こえるぞ」 その声にふっとつかのま、羞恥がよみがえり、そして消えていく。 理性は快楽に押しやられていた。 「い、も……どうでも……いいっ」 声に狂うのは悟の番だった。 目が笑ったかと思えば唇は中心を捕らえたままその指が。 「あぁ……っ」 瑞貴のもうひとつの場所へと。 「んっあっあぁ……っ」 ステンレスのシンクに卑猥な音がこだましては響く。 くちゃり。ソコは指を飲み込んだままきつく締め付ける。 足らない、とでも言うように。 「だ、だめ……ぇっ」 悟の唇の間で中心が熱情の行方を求めてけいれんした。 悟が中心を解放するとそれは最後の快楽を加えられなかったのを恨むかに震え、とろり、滴を零れさせる。 「はぁ……」 恨めしげなため息に今度は指をくわえたソコを嬲り始めた。 抱えあげた片足にわだかまっていた衣服はもう床に落ち、足首にかろうじて下着がゆれ。 かえって生々しい、蠱惑だ。 くちゅり。 指がわざと音を立て。 「あ……っ」 瑞貴が体をそらせる。 「どうした」 それに悟は意地悪く、問うた。 狭く熱い中で指を曲げ、その一点をこりこりと指先で攻めながら。 「あっあ……ぁっ」 「喘いでちゃわかんねぇよ」 やめて欲しいのか、わざと言っては指の動きを止めた。 瑞貴も答えずにただ首を振るだけ。 静かになった指を咥え込んだままのソコがひくり、震えた。 「下のオクチの方がおしゃべりだな」 悟が嘲えば羞恥に身を震わせ、それなのに――いやそれ故にソコはまた熱さを増した。 「もう……だめっ」 瑞貴は悟の首に腕を投げかけ、哀願するように抱き寄せた。 「欲しい……っ」 呟くその言葉にかぶせるように。 這入ってくる。 瑞貴の体をシンクに押し付け腰だけを抱えながら、ゆっくり、じらすように、少しずつ。 「やっ、や……っじらさないでぇっ」 悟の首にしがみつきながら懸命に己の腰を動かそうとする。 が、その腰はしっかりと悟に抱えられ、動かない。 「どうして欲しい?」 欲情に乱れた楽しげな声が瑞貴の耳元に響く。 中途半端な刺激にソコがひくひく震えていた。 「奥まで……っ」 「奥までして欲しくないって?」 悪戯に声が笑い、声と共に悟が少し腰を引いた。 「あ……んっ」 ぴくん。ソコが震える。 「抜けちゃう……ぅ」 瑞貴のソコが悟を捉えたがってうごめきながら咥え込もうとしている。 「奥まで……挿れてぇっ!」 悟が腰を進めた瞬間あがりかけた悲鳴のような嬌声に悟は自分の手を与え。 「んんん……ッ」 快楽の激しさに悟の手から血が滲み始めてももう、止められなかった。 切なげな息遣いと水音だけが給湯室の狭い空間に響いている。 「あぁ……っ」 一際きつく穿たれた腰に、ソコがけいれんする。 「だめ……出ちゃう、出ちゃう……ッ!」 どくん。 瑞貴の背中が強く反り返りそしてそのまま、意識が飛んだ。 「花田さん、手、どうしたんです?」 「やんちゃなのに噛みつかれてね」 「やだ、もう」 悟は相変わらずの冗談口を女子社員にきいている。 「犬にでも噛まれたんでしょ」 そう笑う彼女に悟は苦笑しながらちろり、傷を舐めて見せ。 その影で瑞貴が羞恥に体を熱くしていたのを誰も、知らない。 |