子供は無邪気なものだなんていうのは大人の幻想だ。自分が子供だったころのことを忘れて人はそんな夢を見る。 数人の子供が集まれば悪戯をするし、少々度がすぎた悪さもする。それが当たり前で、当然だとシェイティはすでに知っている。 「僕自身、そんな悠長な子供時代は送ってないんだけどね」 小さく自分にだけ呟いて彼は階段脇を見やった。まだ彼らは気づいていないだろう。だが彼は氷帝フェリクスだった。 「さて、どうするべきかな?」 少しばかり楽しげな声が実に冷たく響く。生憎、常に傍らにいるはずのタイラントがいまはいない。もしも不在でなかったならば恐怖に震えたことだろう。 「あいつ、まだやってるのかな」 自分は終わらせてしまった授業を、まだ彼は続けているのかもしれない。熱心なのではなく要領が悪いのだ、とシェイティは断じてはばからない。 星花宮にメロールはもういない。旅立ってしまってずいぶんになる。以来、星花宮の魔術師たちはカロル、リオン、フェリクス。そしてタイラントの四人が育てている。それぞれが独り立ちを許した魔術師ももう何人かはいた。 「まぁ、暇つぶしに、なるかな?」 呟いてシェイティは足早に階段脇に近づいた。突然のことに驚いたのだろう、直立不動の子供たちだった。 「ねぇ、暇なの」 何をしていたのか、など無駄なことを彼はたずねなかった。見れば歴然としている。 五人の子供がいた。星花宮にいる子供、つまり誰かの弟子だ。シェイティの目はそれがリオンがいま面倒を見ている子供たちだと見て取る。 そのうちの一人、ひどく顔色の悪い子供がいた。背丈も他に比べれば小さく、怯えた目をしている。上着の襟がひどく皺になっているところを見れば、襟首をつかまれていたことなど聞くまでもない。 「え、あ。はい!」 シェイティの二つ名、氷帝フェリクスの名はこんな小さな弟子たちにも有効だった。実に不愉快で、こんなときにしか役に立たない名前などいらないとも思うのだけれど、あるものは有効に使うのが彼だった。 「そう、じゃあ。手伝え」 単純にそれだけを言ってシェイティは背を返す。本来ならばリオンに筋を通すべきなのだが、子供たちはまだ若すぎる。 彼らはリオンの弟子、ではないのだ。リオンが初期訓練をしている弟子候補、と言うのが正しい。いまはまだ誰の弟子とも言いがたい。だからシェイティは自分の意思を優先する。それで特に問題はなかった。 後ろに子供たちがついてきているかは確かめなかった。そんなものは見なくてもわかる。あの怯えた子供が列の最後をとぼとぼとついてきていることも。 「入んな」 図書室の扉を開けて進んだ自分の背後で、子供たちが固まっていた。扉をくぐる、その一歩が踏み出せないらしい。 「でも……入っても……」 「僕が入れって言ってるんだけど?」 「その、リオン師に、だめだって……」 「ふうん。別にいいけど。僕の手伝いはできないってこと?」 言っているほうが無茶なのはわかっている。リオンの言うことは正しい。リィ・サイファの塔ほどではないが、ここも多少は魔法空間で拡張してある。こんなところに無防備な子供を放り込んだらたちまち迷子になって餓死体の出来上がりだ。 「あ、いえ! 手伝います!」 どうやら仲間内の首謀格と思しき少年が慌てて手を上げて入ってきた。その後からぞろぞろとついてくる。怯えた子供は不思議と恐れるでもためらうでもなく入ってきた。 「脅したみたいに思われるのは癪だから言っておくけど。リオンの言葉は正しい。一人で入ったりしようと思わないように。まぁ、別に入っても僕らの誰かがすぐに気がつくから問題はないけどね」 一応、忠告を与えてから気づいて言い足した。言葉の意味を逆手に取られて、いじめの道具にでもされてはたまらない。実際問題として、ここには軽い結界が張ってあるから、子供たちだけで入ろうとしても入れないはずではあるが。 「そこ、座んな」 筆写用の椅子と机だった。シェイティは彼らを座らせてから、その眼前に山と本を積み上げる。子供たちの目が次第に虚ろになっていく。 「あなたがたにもできるような簡単な仕事だよ。さぁ、頑張って写してね」 タイラント曰く、絶対可憐に無邪気な笑顔。最強で、最悪だとは彼の弁だ。子供たちは無言で頭を上下させるばかり。うなずいているつもりらしい。 「筆写の道具はここに置くよ。原本を汚さないように」 言えば子供たちが総じて怯えた顔をした。だから星花宮の本は、いまは言葉の綾で原本と言ったがすべて写本であることは伏せておく。本当の原本はリィ・サイファの塔にある。 「いつまでぼんやりしてるの。さっさとはじめて?」 言いながらシェイティも同じ机に腰掛けた。彼は彼で子供たちにはとても任せられない類の本の写本作りに勤しむ。 仮にも星花宮の主導者の一人がすぐそばで働いているのだ、子供たちも手を抜くような真似はできなかった。 かりかりと、写本作りに励む音だけが図書室に響く。とっくに夕食の時間はすぎてしまっただろう。とはいえ、魔術師の住処など時間が曖昧になるのが常であったから誰も探しになどこない。 「ふ……。あ、すみません」 強張った体と、飽きてしまった心をほぐそうと、子供たちの首謀格が息をつく。すぐさまシェイティの視線が飛んできて体を縮こまらせた。 「あぁ、いいよ。ちょっと見せてご覧」 どこまで進んだかを確かめるつもりでシェイティは彼らの写しを一人ずつ見ていく。なんとも具合のいいことに、一人だけ遅かった。 「まぁ、字は汚いけど判別がつかないってほどじゃないね。いいよ、お疲れ様」 意外なシェイティの労いに、彼らが驚いたように目を丸くするのが不愉快だ。自分はいったいどう思われているのだろう、と腹立たしくなる。もっとも、そばにタイラントがいれば当たり前だ、と絶叫してから笑うだろう。 「それと、あなた。一人だけ遅い。居残りね」 首謀格の少年が唇を歪めて笑った気がした。怯えた子供は小さくなってうつむく。 「……はい」 それが嬉しいのだろう。子供たちは意気揚々と図書室を引き上げていった。 またしばらく筆写の音だけが続く。怯えた子供は確かに遅かった。だが一番字はきれいだった。読みやすく、綴りも正しい。 「できた?」 「……と、思います」 「ふうん」 取り上げて写本を見る。やはり丁寧な字だった。これだったら魔術師にならなくとも書記として食べていくことが充分可能だろう。 「きれいな字だね。遅いけど」 「……すみません」 「褒めてるんだけど?」 「え?」 はじめて顔を上げた子どもはシェイティをまじまじと見つめ、それから慌てて視線を下げた。 「ねぇ、イメルだったよね」 「なんで!」 いきなりだった。悲鳴じみた声をあげられてシェイティは顔を顰める。それにも怯えたのだろう、イメルと言う名の子供は縮こまってうつむいた。 「名前を覚えてたのがそんなに不思議? 子供の名前くらい、全部覚えてるけど?」 「……でも、僕……落ちこぼれで。どうしようもなくって。だから……」 「だから何? あなたの年で落ちこぼれ? なに馬鹿なこと言ってるの」 「でも! 本当のことなんです! 僕だけ、いつもリオン師の課題ができないんです。僕だけ、できなくって、だから……」 「だからいじめられてるの? 言い返せばいいじゃない、そんなこと」 「どうやって言い返せるんですか! だって、できないんです! 僕だけ……」 ぎゅっとイメルは唇を噛みしめ、泣くのを必死になってこらえていた。シェイティは長い溜息をついて立ち上がる。 「ついてきな」 扉の向こうに気配がないのはわかっていた。それでも一応、目で確かめてからイメルを図書室から連れ出す。 「……どこに」 「部屋」 「誰の、ですか」 「僕の」 「どうして……」 「子供部屋に追い返してどうするの。リオンのところにつれて行ったって仕方ないでしょ」 「でも……」 「いいから黙ってついてくる」 とぼとぼと後ろを歩くイメルは、断頭台にでも連れて行かれる気分なのだろう。もしかしたらここで修行をやめるよう言われる、とでも想像しているのかもしれない。それを思ってシェイティの唇にかすかな笑みが浮かんだ。 「入りな」 一度足を止めてから、覚悟を決めたようイメルはシェイティの後に従った。その目が見開かれる。シェイティの二つ名にはとても相応しくない、華やかで優雅な部屋だった。 「言っておくけど! 僕の趣味じゃない! ……タイラントの趣味だから」 言ってから、子供相手に何を言い訳しているのかと自分で自分が馬鹿らしくなる。憤然とそっぽを向いて、それでも暖炉の前にイメルをつれてきて座らせた。 「ほら」 自分が子供だったころ、物凄く貴重で、物凄く好きだった飲み物。ただの温めた牛乳。ずいぶんと他愛ないものが好きだったといまはもう、笑い話にもできる。そんなものすら与えられる機会の少なかった自分だと。 「ありがとうございます……」 だがイメルもまた怯えるように受け取って、隠すように両手でカップを持った。上目遣いでシェイティを窺う。取り上げられそうにない、と言うよりもう自分に興味などない顔をして他を見ている彼に安心したのだろう、やっとイメルは口をつけ、大急ぎでそれを煽る。 「ちょっと!」 当然だった。熱い牛乳なのだ、慌てればむせる。むせるだけですんでよかった、と言うべきだろう。悶えながらでもカップは離さない根性にシェイティは感嘆する。 「イメル! とらないから、て言うか、取り上げはしないから一度離す! まず顔を拭け!」 思わず声を荒らげてしまってから、しまったと思った。イメルが萎縮して殴られるのを覚悟した顔をした。 「ねぇ……」 何を言ったらいいのだろう。考えあぐねていたら自然に手が出ていた。イメルの短い髪をシェイティはいつの間にか撫でていた。 「ここにきてからも、いじめられてるんだ」 つまり、それ以前も。イメルは小さくうなずく。いま髪を撫でる手が、いつ殴りかかってくるかわからないとでも言うように。 「ちゃんと食べられてるの」 「……少しは。あの、村にいるときよりは、ずっと!」 「まぁね……、僕にも想像がつくけどね。前の生活のことは、多少ね」 「……たぶん、いえ、なんでも」 「なに? いいから言いなよ」 まだ牛乳にまみれたままの拳を握ってイメルは顔を上げた。諦めきった表情だった。 「フェリクス師より、ましだったと思った自分が、いやになって」 「でも実際そうじゃない? 僕は闇エルフの子で、あなたは人間だからね」 気にした風もなくシェイティは言う。拍子抜けしてしまったのだろう、イメルはようやく思い出したよう、手を拭いた。 「ねぇ、イメル」 「はい」 「ここ、楽しい? ここにいるの、好き?」 シェイティはイメルの前に腰を下ろし、手を閃かせる。それだけで手品のように菓子が現れた。目を瞬くイメルに魔法だ、と笑って見せる。それを差し出せば食べていいのかと窺う視線。問えばだめだと言われるのを知っているようなその目にシェイティは黙って微笑むだけで菓子を勧めた。 安心したのではない。彼の気が変わってしまうのを恐れるよう、イメルは菓子にかぶりつく。食べてしまえばもう、返せないから。それからなら殴られたって惜しくはないと言うように。 その姿にシェイティは見覚えがあった。正確には見覚え、ではない。経験として、覚えがあった。イメルが全部を飲み込むのを待って彼は話しを続ける。 「あなた、とっても字がきれいだ。もしも魔法を学ぶのがつらければ、書記の弟子に推薦してあげる」 一度言葉を切ってシェイティは子供の目を覗き込む。もったいないな、と思いながら。 「一つ、反則をしよう」 「え?」 「本当は教えるべきじゃないことなんだけどね。あなた、リオンにいま基礎を習ってるんだよね?」 「はい」 「リオンの基礎なんだから当然、大地の魔法だ。そうだね。あなたはそれがどうしてもできない」 きつく唇を噛んでうつむく姿にシェイティは期待する。イメルはできない自分が不甲斐ないのではない、魔法が好きだから、できなくて悔しいのだと。 「それって、要するに他の属性との相性が抜群にいいってことなんだよ」 「……意味が、え?」 「僕らは自分と同じ適性の弟子を最初から育てない。教育が偏るからね。だからあなたはあっちこっちの師匠について、最終的に自分と同じ属性の師匠につくことになる。それが誰かは、反則が過ぎるから教えてあげない」 「わかるんですか!」 「まぁ、見ればね。あなたがどの属性と相性がいいかくらいはわかるよ」 そうでなくとも、最初にリオンにつけられている、と言う時点で決まっているのだ。星花宮の弟子たちは、まず自分とは反対属性の師匠に基礎訓練を与えられることになっている。要するに、いずれイメルはタイラントの弟子になる、と言うことだ。彼がこのまま魔法を志すのならば。修行の過程でどうしても脱落者は出る。それもかなり多くの。魔法の修行はただの興味程度で続けられるほど甘くはない。 「僕に、相性のいい属性が、あるなんて……!」 「ただね、相性がいいだけ。基礎も何もないから、まずはそこから学ばなきゃいけない。わかってるよね?」 「魔法は危険な力になりうるから」 「そのとおり。だから、あなたはどうするの」 「どうって……」 「いまならまだ引き返せるよ。僕らが立っている魔道の道は、果てのない道だ。進めば進むだけ、道が伸びて遠くなる。できるのは、ただ進むだけ。でなければ、引き返すだけ。あなたはいま、引き返せるところにいる」 「……引き返しません」 「どうして? いじめっ子がいるんだよ。基礎だって、まだできないんだよ。どうしてやめないの」 「笑わないで、聞いてくれますか?」 「できるだけね」 真面目くさったシェイティの言葉にはじめてイメルが少しだけ笑った。いずれタイラントの弟子になるはずだから、と言うのを差し引いても可愛らしい子供だと思う。同輩たちからいじめられているのも愛らしい顔立ちが理由のひとつかもしれない。 たぶん。彼らにはいじめているなどと言う自覚はないのだとシェイティは知っている。度のすぎた悪ふざけすぎて、どこまでからかったらいいのかわからなくなっているだけだ。 もっとも、イメル本人にしてみればつらいことに変わりはないだろう。ただ、イメルもシェイティの預かる子供だった。けれど、彼らもまたシェイティが預かる子供たちだった。たとえいまはまだ弟子ではなくとも。彼にも、彼らにも正しい道を示し、進ませるのが師匠の義務だとシェイティは信じて疑わない。 度のすぎた悪ふざけも、彼らなりの迷いだとシェイティにはわかっている。後はそれを気づかせればいいだけだ。ただその前にイメルを救い出すことのほうが重要なだけ。 星花宮の子供たちは全員、大事な子供たちだった。自らの師に我が子のように愛されたシェイティだからこそ、子供たちを慈しむ気持ちは誰より強い。他の三人の主導者もそれを知っていた。口に出すのはタイラントだけだったが。 「魔法が――」 強張った喉から、声が出なかった。イメルは絶望したよう天井を見上げ、そのまま一筋涙をこぼした。 「魔法が、す、好き、なんで……す」 掠れてどうしようもない声だった。それなのに、他にはないもののように、きれいな声だった。 「いい理由だね」 立ち上がり、シェイティはイメルの涙を指先で拭ってやった。そのまま両腕ですっぽりと抱きしめる。驚いただろうイメルは、驚愕が過ぎたのか身動き一つしなかった。 「これは誰にも秘密。約束できるなら教えてあげる。いい、内緒だよ?」 悪戯めいた囁き声。イメルは温かい胸の中で小さくうなずいた。 「あなたには才能がある。この僕が認めたんだ。その意味がわかるね? あなたには才能がある。その上に魔法が好きだ。だったら怖いものなんてないじゃない。あなたはいずれちゃんとした魔術師になれる。それも、力の強い魔術師にね」 イメルに、それは福音のように響いた。何もできない自分。基礎すらまともにできない自分。同輩に蔑まれている自分。 それなのに、氷帝の二つ名を持つ魔術師が認めてくれた。 はじめてだった。星花宮にきて以来、はじめてイメルは声を上げて泣いた。シェイティにしがみついて、声が枯れるまで泣いた。 そんなイメルをシェイティは黙って腕に抱き続けた。背中や、髪を撫でてやる他には話しかけさえせずに。 ようやく小さくなった泣き声に、シェイティはイメルの頬に手を当てる。泣き疲れて熱を帯びた頬だった。涙のあとを拭ってやれば、気恥ずかしさを取り戻したのだろう、少しばかりうつむく。けれど先ほどのような怯えた目はもうしなくなっていた。 「ふうん。よく見るときれいな色の目じゃない?」 頬に手を添えたままからかい混じりに言ったそのときだった。何気なく扉が開いて、そのまま影が硬直したのは。 「シェイティ――! 君は、なにを……!」 「ちょっと、なに誤解してるの! 僕は子供に手を出す趣味はない!」 「子供とかどうとかって言う問題じゃないだろ!? 君は……君が……」 「言っとくけど。浮気も趣味じゃないから」 「趣味でするな!」 吟遊詩人の絶叫に、イメルは目を丸くして、ついで顔を顰めた。破壊音を避けようとしてシェイティの胸に顔を埋めたのが余計に事態の悪化を招いたらしい。 「シェイティ――!」 「だからそんなんじゃないって言ってるじゃない。て言うか、それって子供の前で話すようなことなわけ! ……あ、いやだな」 「え……あの、シェイティ……?」 イメルから腕を離し、シェイティは片手で自分の顔を覆っていた。ちらりとタイラントを見やり、長々と溜息をつく。 「……所帯じみたことを言うようになった自分に物凄い自己嫌悪を感じただけ。別にあなたのせいじゃないから気にしなくっていいよ、ちっちゃな可愛いタイラント」 片手を下ろしたシェイティは、正に花開くようにっこりと笑った。その意味が咄嗟に感じられるだけの知性と感性がイメルにあったのは幸いだった。 「フェリクス師、相談に乗ってくださってありがとうございました!」 飛び跳ねて彼から離れ、タイラントにも一礼して部屋から駆け出していく。だからイメルはそのあとになにがあったのか知らない。むしろ知らなくて幸いだと後年になっても彼は思っていた。 ただこれもいつまでも思っていた。氷帝フェリクスは本当はとても優しい人なのだ、と。その思いはじくじくとした後悔を伴って、生涯にわたって消えなかった。 翌日から、イメルがいじめられなくなったわけでは当然になかった。イメルも言い返すでもなく、やはりうつむいた。 けれどいまは彼の心に氷帝の言葉があった。お前には才能があると言ってくれた彼の言葉があった。黙々と努力を続け、淡々と鍛錬をする日々。 少しずつ魔法が使えるようになっていく日々の中、イメルがタイラントを師と仰ぐころ、いじめっ子たちは一人として星花宮に残っていないことに気づいた。気づきもしなかったほど、魔法に没頭していた自分にイメルは少しだけ、満足した。 |